(1) スケッチ
2日から7日くらいの日程で取材に行きます。
瞬間的なひらめきに心を躍らせながら、ここぞという場所をひたすら探し廻ります。険しい山道を長時間移動することもしばしばですが、沸き上がるアイデアと情熱に突き動かされ、不思議と疲れは感じないものです。自然に対する熱い思いをこめてスケッチに没頭します。
(2) 下絵
スケッチや写真を元に、下絵を制作します。
多くの場合、下絵は鉛筆のみのモノクロですが、色のイメージをより明確にするために、絵の具で彩色することもあります。
(3) 版おこし
半透明のフィルムを下絵に載せ、筆やペンで描き込んできます。
同時に、頭の中で20〜30程の版に分解し、美しい線や効果的な色使いなどを構成していきます。
版画制作には、ただ描くだけでなく、緻密な計画が求められます。
(4) 現像
感光性の乳剤を塗った木枠のスクリーンに、下絵を描いたフイルムを密着させて焼き付けます。感光させた後、水洗いで現像します。感光しなかった部分(絵の部分)は水洗いすると洗い流されてインクが通るようになります。感光した部分は光によって固まり目が詰まった状態になり、インクは通りません。「版」が完成したら、いよいよ「摺り」の段階です。
(5) 摺り
最も緊張する瞬間です。完成した版の下に版画紙を置き、あらかじめ調合したインクを版の上にのせて、スキージ(へら状の道具)で一気に摺り上げます。
刷り上がった色が思い通りに行かなければ、インクの調合から何度でもやり直します。
(6) 乾燥
刷り上がった版画紙は、専用のラックに置いて乾燥させます。乾燥したら、上からさらに次の版を摺り、再び乾燥。全ての版が摺り終わるまで摺りと乾燥を繰り返します。地道な作業ですが、版を重ねる度に作品への更なる愛情がわいてくるのは言うまでもありません。